◆ このページのお奨めポイント ◆
熱中症死亡事件における労災申請のポイントをまとめています。 国の掲げる(抽象的な)認定要件を載せて終わり、としているWebサイトや書籍が多い中、具体的な立証ポイントを並べているこのページは、情報価値を有していると思います。
労基署への申請〜熱中症による死亡事故
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必要な情報はそろったようです。 これまでの調査でわかった事実をもとに、ポイントを踏まえた効果的な立証を行い、労基署に労災を請求します。
STEP4
労基署への申請
死亡事件において、労基署への立証のポイントは3つです。
- 熱中症になったこと
- 熱中症が死因であること
- その熱中症の原因が業務にあること
事案によっても変わってくるでしょうが、ここでは 13個のポイントをあげていきます。 こうしたポイントを意見書としてまとめたものを、労災の請求書に添付するのが、弁護士の仕事です。
1.気温・湿度が高かったこと
暑い日であったのであれば、当然その事実を主張しておきます。 気象庁のWebサイトなどから当日の気温(や湿度)を調べましょう。
2.WBGT値が高かったこと
WBGT(暑さ指数)が高かったのであれば主張しておきます。
WBGTは気温だけでなく、湿度や風速、日当たり、照り返しの輻射熱を考慮した数値であり、環境省のWebサイトからおおよその値を調べることができます。
3.重労働であったこと
重労働であったのであれば主張しておきます。 業務内容を会社から書面で送ってもらい労災の請求書に添付すれば、労基署にも詳細が伝わるでしょう。
4.休憩時間が不充分だったこと
作業の休憩時間がなかった(短かった)のであればそのことを主張します。 ただし死亡事件ではその点を明らかにするのは難しいかもしれません。作業現場付近の住民に話を聞くなどしても、やはり有力な証言は得られないことが多いです。
5.空調設備がなかったこと
空調がなかったのであれば主張しておきます。
6.衣服
もしも作業着を2重に着用していたり、通気性の低い素材であった場合は、その点を主張しておきます。
7.飲料水が用意されていなかったこと
水分・塩分の不足は熱中症の大きな原因となります。会社が飲料水や塩分を用意していなかったのであれば、その事実を主張しておきます。
用意されていなかったからといって被災者が水分を補給していなかったとは限りませんが、その可能性を示す事実です。
8.明らかに水分補給していなかった時間があること
会社が救急隊に語ったところによれば、アオバさんは午前11:30には意識が朦朧とした状態となり、その後は横になっていた。
ということは、11:30から救急隊が到着した14:40までの3時間は、水分を補給できていなかった可能性が高い。
被災者が水分を補給できていなかったことが明らかな時間帯があるなら、その点を主張しておきます。
9.実際に脱水症状がみられたこと
遺体の検案書によれば、アオバさんの尿は褐色であった。
また、運び込まれた病院のカルテによれば、アオバさんの体温は41.1℃と高温であり、汗をかけず体温調節ができないほどの深刻な脱水状態に陥っていたことがわかる。
病院のさまざまな記録から被災者が脱水症状であったことがわかるなら、その事実を主張しておきます。
10.年齢が高かったこと
年齢が上がれば熱中症にかかりやすくなるので、被災者がある程度の年齢であれば主張しておきます。
11.被災者が熱中症を発症していたこと
これまでの証拠からアオバさんが暑熱な環境下で重労働に従事していたこと、充分な水分補給をできずに脱水状態にあったことがいえる。
そしてアオバさんは午前11:30から意識もうろう状態となり、ふらつき感を覚えるなど熱中症の前駆症状を発症している。 その後、意識喪失の状態に陥り、著しい体温の上昇もみられた。
こうした症状は熱中症の症状経過と符号している。 アオバさんが熱中症を発症していたことは明らかである。
結論にあたるものです。これまでの証拠に加え、被災者の症状が熱中症のそれと一致していることをあげ、熱中症であったことを立証します。
12.熱中症が死因であること
熱中症の死亡事件では、直接の死因として「多臓器不全」、「腎不全」、「心筋梗塞」などと書かれることもあり、 熱中症がそうした症状を引き起こす原理について触れておきます。
13.熱中症の原因が業務にあること
労災とは、病気になったことではなく、業務が原因で病気になったことについて認められるものなので、 熱中症の原因が業務にあったことを主張しておきます。
とはいえ今回のケースでは、被災者が熱中症であったことが認められるならば、その原因が業務にあったことは明白なわけですから、 形式的な主張です。
以上です。事案によって立証すべきポイントは変わってきますが、大体このような内容の意見書を添付し、労災を申請します。
今回のサンプル事案であればおそらく労災は認められるでしょう。 しかし労災保険は被害者の損失のすべてを補償してくれるわけではないので、続いて会社への賠償請求を検討します。
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