◆ このページのお奨めポイント ◆
労働者向けのページです。熱中症の労災申請を検討したい人に有益と思われる情報を一通りまとめています。熱中症の労災について概要を押さえるのに良いと思います。
熱中症と労災
仕事をしていて熱中症になった場合、それは労災となり、国から補償を受けることができます。
受け取れるもの
熱中症の一般的なケースにおいて、受け取ることができるのは、
-
治療費
療養補償給付 -
休業している間の給与
休業補償給付・休業特別支給金
の2つでしょう。病院にかかったときの治療費、そして休業をしたのであればその分のお給料です。
熱中症は1日〜数日で治るものが多いとされているので、そう大きな金額にはならないかもしれません。
一方で、高次脳機能障害などの後遺症を引き起こす場合もあります。 その場合は、
を請求できる可能性があるでしょう。
症状が重いほど、金額は大きなものになります。
さらに熱中症で被災者が亡くなるケースもあります。その場合は、
を受け取ることができます。金額など詳しいことはリンク先でご確認いただけますが、遺族に支払われる年金は大きな額になるでしょう。
もしも申請しなかったら
労災で労働者が休業した、あるいは亡くなったとき、会社にはそれを国に報告する義務があります。
労働者の側に報告義務はありませんが、治療費がかかってしまいます。
それに労災であるのに申請をしなかった場合、治療に健康保険を使うことができない決まりとなっています。労災は労災保険で、労災でないなら健康保険で、がルールです。
また予想外に治療が長引いたり、後遺症がでる可能性も中にはあるのですから、もし会社に、
と頼まれても、了承することにはリスクがあります。会社がいつまで約束を守ってくれるかはわかりません。
Point
労災認定の難しさ
多くの場合は素直に認められると思います。 熱中症が労災と認定されるためには、
- 熱中症になったこと
- その熱中症の原因が業務にあること
の2つが労基署から認められる必要があるのですが、
- 熱中症になったこと
についていうならば、暑熱な環境でふらつきなど体調不良になったのであれば、真っ先に熱中症が疑われるわけですから、格別大きな問題にならないことが多いでしょう。
そして、
- その熱中症の原因が業務にあること
についても、暑いところで働いていて熱中症になったのですから、原因が業務にあったことは比較的明らかなことが多いと思われます。
労災申請は誰がおこなうのか
会社が代行してくれる場合もありますが、原則として自ら行うものです。 労基署のほうから気を利かせて連絡をくれるわけではないので、行動をおこなさければ何も始まらないと思ってください。
熱中症の労災申請の方法
そう難しくはなく、労基署や病院に必要書類を提出するだけです。 あとは労基署が調査をし、労災にあたるのかどうかを判断します。
請求できる主な給付です。 必要書類はそれぞれのリンク先でご確認ください。申請書類の記入例もあるのでわかりやすいと思います。↓
-
治療費
療養補償給付 -
休業している間の給与
休業補償給付・休業特別支給金 -
遺族への給付
遺族補償給付 -
葬儀の費用
葬祭料 -
子供や本人の学費
労災就学援護費
とはいえ労基署があなたの事故を詳細に調べてくれるかはわかりません。 労基署任せにせず、自ら積極的に労災を立証することが望ましいといえます。
サンプルケースではありますが、私がどのような立証を行うのか、立証のポイントとなる部分を解説しています。 参考になるかもしれません。
ご自身での証拠集めに不安があるようでしたら、青葉法律事務所の労災申請サポートも検討してください。
会社への賠償請求
労災保険は損失のすべてを補償してくれるわけではありません。
休業補償は満額には届きませんし、被災者の逸失利益はその一部しか補償の対象にならず、慰謝料にいたっては全くカバーされません。
とりわけ被災者が亡くなった場合、慰謝料などは大きな金額になることが多く、労災保険でカバーされないそうした損害の補償を求め、会社への民事賠償請求をおこなうことがあります。
Point
会社を訴えることができるとき
とはいえ、常に会社に賠償請求できるわけではありません。 裁判を起こせるのは、被災者が熱中症になったことについて会社に責任があるときのみです。
会社がすべきことをしていなかったことが原因で労災が起きてしまった場合、会社に賠償責任が生じます。
では会社がすべきこととは何でしょう? 詳しくは『熱中症の賠償請求』ページで説明していますが、簡単にいえば、
-
熱中症を防ぐための充分な配慮を会社がしていたか
水分・塩分を補給させる、頻繁に休憩をとらせる、など。 -
熱中症になった被災者に会社が正しい処置をしたか
すぐに休ませ救急車を呼ぶ、など。
です。こうしたことができていなかったとき、会社は安全配慮義務に違反したとみなされ、被災者や遺族に賠償責任を負います。
Point
熱中症と裁判
熱中症は1日から数日で治ることが多いとされており、重症化するケースは比較的少ないでしょう。
短期間で回復した被災者は、なかなか会社に裁判を起こそうとまでは思わないかもしれません。 被害感情が少なく、また訴えても得られるものが多くないからです。
現実としては、熱中症で会社を訴えるのは、被災者が亡くなったか重い障害を負ったケースが中心となります。
そして労災の死亡事件についていえば、特有の難しさがあります。 被災者が亡くなっているので、事故当日に何があったのか、詳しいことがわからないのです。
会社は、
であったり、
と言ってくるかもしれません。
しかしそれが本当かはわからないのです。死人に口なしと考えているのかもしれません。
被災者が何も語れない中で真実を見つけ出すこと、これが弁護士の仕事となります。 加地弘はそうした経験をこれまで積んできました。
私がどのように遺族をサポートし会社と闘うのか、これまでの経験をもとにしたサンプルケースでご紹介します。
熱中症事故の調査方法、労災請求のポイント、そして会社への賠償請求について、おおよそのことがわかるでしょう。
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