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複数業務要因災害とはなにか

2020年の法改正により、「複数業務要因災害」と呼ばれるものが原因になった病気について、新たに労災が認められるようになりました。

複数業務要因災害になるのは次の4つをすべて充たしているケースです。↓

  • 2つ(以上)の会社で働いていた
  • 過労が原因で心や身体を壊した(または亡くなった)
  • しかし、それぞれの会社での労働は、それほど過酷なものではなかった
  • とはいえ、2つ(以上)の会社での労働を全て合わせて考えれば充分に過酷だった

2つ(以上)の会社で働いていたときの仕事の大変さを、合算して判断してもらえるようになったのがポイントです。

従来の制度においては、労働者が2つの会社で働いていても、労災を請求するにあたっては1社ずつバラバラに請求する必要があり、 また労基署が仕事の大変さを判断する際も、1社ずつ独立して(別々のケースとして)評価していました。

例えばAさんが2つの会社で、1日にそれぞれ7時間と5時間、週5日ペースで働いていたとします。 合わせて1日に12時間ですから、かなりの労働です。↓

しかし従来の制度では仕事の大変さをあくまで1社ずつバラバラに評価していたので、

1日に7時間の労働は大したことはありませんね。
1日に5時間の労働も大したことはありませんね。

という評価になってしまい、もしもAさんが過労で倒れ労災を請求しても、認定を得るのは難しいところでした。

これを

合わせて1日に12時間の労働ですから大変ですね。

という当たり前の評価をできるように変えたのが、2020年の法改正です。

つまり労災になる範囲が拡大されたんですね。
はい、労働者にとって喜ばしいことといえます。

このように複数の会社での労働を合算したことで労災になるとき、それを複数業務要因災害と呼ぶことになりました。

受け取れるものは同じなのですが、これまでの労災とは違うものであるということにしたので、

  • 業務災害

    仕事中に負ったケガや病気
  • 通勤災害

    通勤中に負ったケガや病気
  • 複数業務要因災害

    複数の会社での労働を合算した結果、労災となる病気

という3種類の労災が誕生することになりました。

労災の種類が増えたということは、給付金の種類も増えるということで、 休業補償を例にあげると、

  • 休業補償給付

    仕事中に負ったケガや病気についての休業補償
  • 休業給付

    通勤中に負ったケガや病気についての休業補償
  • 複数事業労働者休業給付

    複数の会社での労働を合算した結果、労災となる病気についての休業補償

の3つが存在することになりました。
(受け取れるものは同じなのですが・・)

そんな風に2020年に誕生した給付金が、↓

  • 複数事業労働者療養給付
  • 複数事業労働者休業給付
  • 複数事業労働者傷病年金
  • 複数事業労働者介護給付
  • 複数事業労働者障害給付
  • 複数事業労働者遺族給付
  • 複数事業労働者葬祭給付

↑の7つです。

勘違いするかもしれませんが、2つ(以上)の会社で働いている労働者が常にこれを請求する、というわけではありません。

あくまで、2つ(以上)の会社の労働を合算しないと労災にならないかもしれない(合算すれば労災になりそうな)ケースで請求するものです。

ということはつまり、

工場で作業中にケガをしました

といったシンプルなケースでは、例えその労働者が2つの会社で働いていたとしても、 従来どおり療養補償給付などを請求すればいいということになります。

ケガが労災かを判断するにあたって、2つの会社の労働を合算して考える必要はないからです。

合算して考える必要があるのは、過労事件です。 そのため、複数業務要因災害の対象となる病気は、今のところ、脳・心臓疾患と精神障害に限られています。

2つ(以上)の会社で働いている労働者が働きすぎで倒れた、うつ病になった、というケースでは、 複数事業労働者○○給付を請求するのがいいでしょう。

とはいえ、〇〇補償給付と複数事業労働者○○給付は請求書が同じなので、請求者のほうで2つの違いを意識することはあまりないかもしれません。

青葉法律事務所による申請サポート

青葉法律事務所では労災申請のサポート業務を行っております。

どちらかというと弁護士は、裁判をする段階で労災事件に携わることが多いのですが、 私たちは裁判になる前に認定を勝ち取ることが重要であると考えています。

弁護士が入るタイミングは、早いほうがいいのです。

労災を申請するのは、手続きだけを見れば、それほど難しいわけではありません。

しかし手続きに必要な最低限の書類を、労基署にいわれるがままに、すなおに提出しても、認定を得るのは難しいのが現実です。

労災の申請は入学試験のようなものと思いましょう。 受験することは誰にでもできますが、合格しようと思えばそれなりの・・かなりの、努力が必要になります。

労基署が教えてくれるのは、いわば願書の提出方法だけ。 合格のために必要な勉強を教えてくれるわけではありません。

受験生が合格をめざして予備校に通うなどするのと同じように、 労災の認定を得るために、専門家によるサポートを検討してはいかがでしょうか。

何をサポートしてもらえるのですか?

私たちが行うことは、裁判を起こすときに行うことと基本的に変わりありません。 依頼人に有利な証拠を集め、不利な証拠にはフォローを入れます。

説得をする相手が、裁判官から労基署に変わるだけですから、 ふだん私たちが行っている弁護士としての仕事と、大きく変わる点はないのです。

労災の認定にあたっては、多くの人が重要であると考えるポイントと、労基署が重要であると考えるポイントとに、 おそらくいくらかの開きがあります。

労基署が重要であると考えるポイントをふまえ、労災であると認定されるために必要な証拠を、私たちはできるかぎり集めます。 この点は特に、働きすぎによるうつ病や過労死事件において重要です。

私たちは労災の申請を、単なる「行政手続き」と考えてはいません。 裁判に匹敵するほどに難しく重要な手続きと考えています。

このまま裁判に移行しても構わないといえるぐらいのしっかりした証拠を、 申請の段階でできるかぎり集める努力をします。

独力での証拠集めに不安があるようであれば、ご相談ください。


申請サポートの費用

33万円(消費税込み)

  • 審査請求・再審査請求の段階から入る場合は44万円(消費税込み)から
  • 事案により増減があり得ます。

事案により相談

着手金は結果のいかんに関わらず発生する費用のことであり、報酬金は成功報酬のことです。

報酬金を明確にしていないのは、労災の給付金が年金形式などさまざまな形で支払われるものであり、申請が通った場合のあなたの経済的利益を算出することが難しいからです。 よって事案ごとに相談とさせてください。

代表弁護士加地弘

文責:青葉法律事務所弁護士 加地弘

この10年以上、ほとんど労働事件ばかりを扱ってきました。相談に始まり裁判まで多くの経験を積んでいます。 区役所、上場企業などでセミナー・講演多数。 2016年から労働局の東京都労働相談情報センターからの依頼で、セミナー講師を務めてもいます。

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