退職金のトラブルは弁護士にご相談ください
そもそも退職金の性質とは
会社にはもともと退職金を支払う義務はありません。 退職金制度を用意するかしないかは、会社が自由に選択していいことになっています。
しかし、いったん制度を設ければ、支払いの義務が生じます。
制度を設けるとは、就業規則などに退職金を支払うことを明記し、金額の具体的な計算方法や支払い方法を定めることをいいます。
この国では会社に退職金制度があるのが普通です。かつてより少なくなっているとはいえ、今でも多くの会社が制度を用意しています。
会社が制度を設けているのなら、会社側の次のような言葉は不当であるといえます。↓
半額でも出るだけ感謝してちょうだいね。
本来受け取れるはずの退職金を受け取れなくなる原因として、主に次の2つが考えられます。1つめは、先ほどからいうように、退職金が恩恵的なもの、すなわち会社からの感謝の証であり、従業員の方から請求する権利はないと誤解してしまうこと。
もう1つは、労働者が会社の就業規則・退職金規程の内容を知らないことです。↓
うちの会社ではそれしか出せないルールなの。
と会社から言われたとき、あなたはそれが事実であるかを確かめようと思うでしょうか? もしかしたら就業規則には全く違うことが書かれているかもしれません。
いくら法が労働者の権利を保障していても、労働者がそれを知らなければ意味がありません。 会社のいっていることが何かおかしい、金額が少なすぎる、と感じたら、まずは就業規則を確認しましょう。 会社は就業規則をいつでも閲覧できる状態にしておく義務を負っており、見せるのを拒むことはできません。
既に会社を退職してから日が経っている場合でも、直ちに泣き寝入りをする必要はありません。 退職金請求の時効は5年となっているからです。
うちの会社には退職金規程なんて無いけれど、過去に何人かの従業員にせんべつとして退職金のようなものを払ったことがあるんだよね。
これって会社に退職金制度があったことの証拠になってしまうのかな? 不公平だから俺にも払え、なんて言われたらどうしよう?
原則として、就業規則等に定めがないのであれば、退職金制度は無いものと見なされます。 ルールが存在しない場合に、一部の従業員にだけ功労分として支払うのは会社の自由です。
例外的に、「正式に定められてはいないものの、実質的には退職金制度が存在していたに等しい」と見なされるケースがありますが、 過去に何人かに支払ったことがあるという程度では、そうしたケースにも当てはまりません。
うちの会社には退職金制度と呼べるものは無いんですけど、私が辞めるときは特別に退職金を出してやると以前社長が約束したんです。
ところが今になって、会社はそんな義務は無いの一点張りで逃げようとしています。本当に義務が無いんですか? 退職金制度が無くたって、約束したお金は払わないといけないんじゃないですか?
制度がある場合に比べて、請求の根拠が弱まってしまう点は否めないのですが、それでも請求することは可能です。
具体的な金額まで約束があったのか、何かと交換条件の約束だったのか、口頭での約束だったのかそれとも書面による契約を交わしたのかなど、 状況によって変わってくるケースですので、詳しいお話を伺う必要があります。是非ご相談にいらしてください。
どういう制度を設けるかは原則として会社の自由ですから、パートの従業員に支払わない制度になっているのであれば、基本的には仕方がないといえます。
ただし、最近はパートや契約社員の中にも正社員と変わらない仕事・働き方をしている人が少なくなく、 そうした人たちを正社員と比べて差別的に取り扱うことには問題があります。場合によっては違法行為にさえなります。 請求できる可能性もあるので、よろしければ一度ご相談ください。
そもそも会社の規程が、本当にパートの従業員に退職金を支払わなくていい内容になっているのか、確かめてみましょう。 規程がずいぶん前に作られたものである場合、パート従業員や契約社員を正社員と区別していない内容になっていることが少なくありません。
仮にそうであれば、退職金はパート従業員にも支払われるものと見るのが原則です。 会社の勝手な解釈は許されません。
退職金を巡るトラブルが生じるとき
退職金を巡って労働者と会社がトラブルになりやすいのは、大きく次の2つの場合です。
- 経営が苦しいとき
- 従業員の退職が円満なものでないとき
それぞれのケースが引き起こす典型的なトラブルを見ていきましょう。
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